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近世の茶碗に魅せられて
茶碗に歴史がある。
いつの時代か、どこで作られたのか、陶工は誰であったのか、それを探るには印銘もしくは描銘がひとつの手がかりとなる。茶碗の戸籍がわかり、茶碗の系譜を知ることも可能である。
陶芸作品の仕入れで陶芸家を訪ねて全国各地を巡っていたある時、ふと目に付いた骨董店を冷やかし半分で覗いたことがあった。私が40歳代の後半のことである。
珍しい茶碗が店の奥に展示してあったので、店の主人に尋ねると「それは〇〇焼で、江戸時代末頃にこの土地で作られていた茶碗」という。嘘か真か解らずに土産代わりに購入した。印銘を頼りに文献資料を調べていくと確かにその茶碗は店の主人の言っていたとおりのものであった。そうして幕末の頃の茶碗に興味を持ち研究を始めるようになり、珍しい茶碗があればそれを資料に文献などを読み漁る毎日で徹夜も惜しまずの日々になってゆきました。
全国各地で多種多様の窯が作られ規模の大小も様々で、日本人のやきもの好きは今も昔も変わらないと思うと益々興味が深くなっていきました。幕末から明治、大正、昭和初期と時代に幅がでてきたところで、「近世の茶碗」と造語し、更に研究にも熱が入り現在に至っております。
楽・志野・織部・唐津・伊賀・備前・信楽・萩・高取など優れた作品を生み出した時代は桃山時代で、それらは江戸時代に入ると衰退し消滅したというのが定説ですが、近世の茶碗を研究する内に、一度途切れたかに見える桃山時代の技術は各地の様々な窯元や陶工によって受け継がれていたことが解ってきた。
陶工たちは、営々として技術や技法を守り後世に伝えようとしていた。風雪に耐えるようにしていた陶工も居たであろう。
印銘を手がかりとして、いにしえの窯元や陶人を探るとき、それらが存在し彼らが生きていた時代の世相までもが確実に感じられるのである。これからご紹介する茶碗の数々は「日本陶磁の伝統」であり、「日本のやきもの」のほんの一端です。お目に留まれば幸いに存じます。 |
| 黒田和哉(銀座 黒田陶苑主人) |
| 著者プロフィール
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| 黒田和哉 Kazuya Kuroda |
| 昭和6年 |
東京都中央区出身
銀座黒田陶苑創業者 黒田領治の長男 |
| 昭和28年 |
慶應義塾大学法学部 卒業
株式会社黒田陶苑 入社 |
| 昭和62年 |
初代社長・黒田領治没
株式会社黒田陶苑 代表取締役社長に就任
二代黒田陶々庵を襲名 |
| 平成2年 |
(社)日本陶磁協会 常任理事 |
| 平成6年 |
陶説 編集長 |
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